私は色んな音楽配信サービスに楽曲登録していて、毎月再生回数に応じた楽曲利用料を受け取っている。その中でもSpotifyは全世界で多くの人が利用している音楽配信サービスで、現在、私の配信収入の8割はSpotifyからだ。とはいえ、Spotifyの1再生あたりの単価が安いということはずっと言われている。といっても、他の配信サービスとそれほど差があるわけでもない。中には1再生あたりの単価がSpotifyの10倍以上のサービスもあるにはあるけれど。
こういった楽曲利用料については、配信サービスの収益のうちの一定の割合がアーティスト側に分配されるが、1再生あたりの単価というのは、全体の再生回数が分母になっているといっても大きく間違ってはない。つまり、配信サービスの収益が一定ならば、全アーティストの全楽曲の再生数が多いほど1再生あたりの収益が減る。
そうすると、色々問題がある。一つは、超有名アーティストは1曲で何億再生も再生されるから、分母が大きくなりすぎて、1再生あたりの単価が著しく小さくなるということもある。これでは無名アーティストの収入は著しく小さくなるから問題だという人もいるが、同じ土俵でやっているわけだから致し方ないともいえる。
もう一つの問題はとても根が深い問題である。ノイズコンテンツといって、とうてい音楽とは思えないような音を楽曲として登録するヤツがいる。そういうやつの再生も1再生となってしまうと、そういうのだらけになって分母が大きくなるのはどうよ?ってことになる。これはちょっと問題の根が深くて、一応、音楽だけれど、1分くらいの短さで、「あれ?それで終わり?」というようなのとか、「唐突に始まって唐突に終わる」とか、「一応楽器を鳴らしているけど、これ、メチャクチャじゃん」みたいなのも出てきているのも事実。で、別にそんなの登録しても誰も聴きたがらないからいいじゃんか、とはいかない。そういうのでもなんでも登録しておいて、自動再生ツールなどを使って大量再生させて、再生回数を稼ぐわけだ。再生回数×単価となるわけだから、単に再生回数を稼げば、不当に収益を吸い取ることができるわけよ。要は、ノイズでもなんでもテキトーに音を鳴らしといて登録⇒大量再生⇒収益吸い取り、という風にして不当に金を稼ぐ奴がいるのよ。
そういう奴が不当に収益を得てしまうと、マジメに音楽を追求しているアーティストの収益が減る。これは、めちゃくちゃ問題だよね。ちゃんとした音楽を提供しているより、ゴミを登録しといて再生回数を不当に吊り上げて金を巻き上げる方が儲かるとしたら、そもそも音楽配信サービスなんて成り立たない。
なので、今回、Spotifyは色々対策をした。
一つは、明らかに音楽ではないノイズコンテンツと認められるものについては、2分以上なら0.2再生とし、2分未満はゼロとする。
もう一つは、不当に再生回数を吊り上げていることがわかったら、ペナルティーを科すというものだ。
これで、ノイズコンテンツや不当な再生回数稼ぎを排除できるとSpotifyは考えたようだ。
まあ、これは賛成。特に、最近、ノイズコンテンツやら、不当な再生数稼ぎが段々と増えてきて、おかしな世の中になりつつあったので、こういう措置は絶対必要だ。
でもって、さらに勇み足というか、ちゃんとした音楽にちゃんとした収益を配分しよう、という考えが過ぎたのかもしれないが、
「年間再生回数が1000回未満の楽曲については楽曲利用料を払わない」
という措置をとった。
まあ、ちゃんとした音楽なら年間1000回くらいは聴かれるだろう、ということなのかもしれないが、これがハードルが高いと感じる人も多いことは事実だ。俺自身の楽曲を調べたところ、年間再生回数が1000回以上のものは9曲だった。これを多いと考えるか少ないと考えるかは微妙だが、Spotify全体の楽曲のうち年間再生回数が1000回未満のものは6割だそうで、そうすると、全体の4割の楽曲に対してしか楽曲利用料が払われなくなる。まあ、これによって、分母が小さくなるので、ちょっと嬉しい??かなあ?微妙だなあ。
俺みたいに数曲でも年間1000回以上の再生のある曲を持っているアーティストであればよいが、年間1000再生未満の楽曲しか登録していないと、Spotifyからは楽曲利用料が払われなくなる。まあ、年間1000回未満だと楽曲利用料も元々たいしたことないよ。1再生=1円としても年間1000円未満だもん。
さあて、これで私のSpotifyからの楽曲利用料がどう変化するのか、ある意味楽しみでもある。